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【2025年最新】新株予約権付融資(ベンチャーデット)とは?メリット・デメリットを徹底解説


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Last Updated on 2025年9月2日 by ロジメイト編集部
【2025年最新】新株予約権付融資(ベンチャーデット)とは?メリット・デメリットを徹底解説
スタートアップの資金調達について、最近「新株予約権付融資」という言葉をよく耳にするという経営者の方も多いのではないでしょうか。
従来のベンチャーキャピタルからの出資とは少し違った、新株予約権付融資という新しい資金調達手法が注目を集めています。とはいえ、「名前は聞いたことがあるけれど、実際どんな仕組みなの?」「うちの会社に適用できるのかな?」といった疑問をお持ちの方も多いかと思います。
そこで今回は、新株予約権付融資の基本的な仕組みから、メリット・デメリット、実際の活用方法まで、分かりやすく解説していきます。
そもそも新株予約権付融資(ベンチャーデット)とは
新株予約権付融資とは、企業が金融機関から融資を受けると同時に、金融機関に新株予約権を無償で提供する資金調達スキームです。
もう少し詳しく説明すると、企業が新たに発行する新株予約権を金融機関が取得し、その対価として必要な資金を供給する仕組みとなっています。ここでいう新株予約権とは、発行時に定められ価額で、所定の株数の株式を所定の期間内に取得することができる権利のことです。
実際の流れはこうです。企業が銀行から融資を受ける際に、「将来、当社の株式を決められた価格で購入できる権利」を銀行に無償で提供します。銀行にとっては、通常の融資による利息収入に加えて、企業が成長した場合の株式売却益も期待できるため、企業には通常よりも低い金利での融資が可能となるわけです。
近年、日本国内でも急速に普及が進んでいる資金調達手法として注目を集めています。

融資を受ける際の銀行との付き合い方についても記事を書いてます!
新株予約権付融資(ベンチャーデット)は日本でどれくらい普及しているのか
政府系金融機関の動き
日本政策金融公庫の新株予約権付融資は2007年に運用を開始しました。
当初の融資限度額は2.5億円でしたが、政府のスタートアップ支援強化に伴い段階的に拡大され、2022年にスタートアップ支援資金の創設とともに14.4億円に、さらに2024年2月には20億円まで拡充されています。この数字を見ても、政府がいかにスタートアップ支援に力を入れているかが分かります。

日本政策金融公庫「スタートアップ支援資金の概要」より抜粋(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/startup.html)
民間金融機関も続々参入
民間銀行も積極的に参入しており、状況はかなり活発です。国内ベンチャーデットの先駆者であるあおぞら企業投資、静岡銀行を筆頭に、今では以下のような金融機関が取り扱いを行っています。
新株予約権付融資を取り扱う金融機関
- メガバンク系:みずほキャピタル、三井住友銀行、りそな銀行、SBI新生銀行といった大手が参入
- 地方銀行:横浜銀行、東京スター銀行、名古屋銀行、山梨中央銀行などが積極的に取り組んでいます
- その他の金融機関:JA三井リースなども参入
選択肢がどんどん広がっているのが現状です。
新株予約権付融資(ベンチャーデット)による企業側が得られるメリット
1.金利負担を軽くできる
最も分かりやすいメリットは金利の安さでしょう。新株予約権付融資の利率は他の一般的な融資プログラムよりも優遇されることが多く、企業の返済負担を軽減し、資金を効果的に活用できます。
2.株式希薄化を先送りできる
エクイティファイナンスと比較して、すぐには新株予約権が行使されずに株式発行がなされないため、企業側には即時に株式の希薄化が生じないメリットがあります。「上場まで時間が欲しいが、その間の希薄化は避けたい」と考える経営者にとって、これは大きな魅力でしょう。
3.担保条件での優遇
日本政策金融公庫の新株予約権付融資は無担保で利用できます。有形固定資産や知的財産などの担保となる資産を持たないベンチャー・スタートアップにとって、これは大きなメリットとなります。ただし、民間金融機関の場合は、各機関によって担保条件が異なる場合があります。
4.資金使途に融通がきく
利用目的や返済スケジュールなど、ある程度の柔軟性が許容される場合があり、企業の状況に合わせて融資条件を調整できます。
新株予約権付融資(ベンチャーデット)にて、気をつけるべきデメリット
1.将来的な株式希薄化は避けられない
新株予約権が行使されれば、結局は株式の希薄化が発生します。特に企業価値が大幅に上昇した場合、当初の想定を超える希薄化となる可能性があります。この点はしっかりと理解しておく必要があります。
2.会計処理がややこしくなる
新株予約権付融資は、金融商品会計基準に基づく「区分法」により会計処理される必要があります。「その他の新株予約権付社債」の社債部分を融資に置き換えた金融商品として処理するため、従来の借入金処理とは全く違います。
この複雑な会計処理により、以下のような課題が生じます:
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毎期の利息計算が複雑化(償却原価法による調整が必要)
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新株予約権の公正価値評価が難しい
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監査法人による厳格な審査対応が必要
上場準備企業にとっては、監査法人からの指摘を受けて決算作業が遅れるリスクもあります。
新株予約権付融資(ベンチャーデット)の会計処理で注意しておきたいこと
区分法の適用が基本
新株予約権付融資の会計処理では「区分法」が適切とされています。「区分法」は融資部分と新株予約権部分を別々に評価する方法です。(企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」)
実務で困ること
利息計算が複雑になる
契約上の金利に加えて「償却原価法」による調整が必要になります。
新株予約権の価値算定が大変
新株予約権を発行することで金利が軽減される場合、その軽減分から新株予約権の価値を逆算する方法が一般的です。
専門家の力が不可欠
これらの会計処理は専門性が高いため、公認会計士や評価専門会社との連携が不可欠です。
新株予約権付融資(ベンチャーデット)はどんな企業に向いているか
ベンチャーデットは「ある程度ビジネスモデル、収益モデルが確立したサービスの横展開、事業拡大資金としての利用が最も適している」とされています。
具体的には以下のような資金需要がある企業が対象となります:
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組織拡大のための採用費・人件費
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新しい顧客を獲得するための広告宣伝費
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営業エリアを拡大するための出店資金
反対に、まだ売上が立っていないシード期のスタートアップについては、利用が困難とされています。
新株予約権付融資(ベンチャーデット)はいつ使うのがベストか
エクイティファイナンスのタイミングで
ベンチャーキャピタルから出資を受けると同時か、その直後のタイミングが最適です。投資家から評価を受けたタイミングなら、金融機関にとってもプラスの判断材料になります。
ダウンラウンドを避けたい時
最近では、前回よりも安い企業価値での資金調達(ダウンラウンド)を避けたいスタートアップからの相談も増えているとのことです。
新株予約権付融資(ベンチャーデット)は今後はどうなりそうか
政府は「スタートアップ育成5か年計画」(2022年11月)に基づいて、スタートアップ育成環境の整備を進めています。
全国銀行協会も2025年2月に「スタートアップ融資実務ハンドブック」を作成し、金融機関のスタートアップ支援を後押ししています。また、制度の標準化や法的課題の解決にも取り組んでいます。
地方銀行の参入も加速しており、東京以外の地域でも利用環境が整いつつあります。
よく聞かれる質問(FAQ)
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新株予約権付融資と通常の融資、どちらがいいの?
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金利負担を抑えたい、株式希薄化を先送りしたい場合は新株予約権付融資が有効です。一方で、会計処理の複雑さを避けたい、将来の希薄化リスクを取りたくない場合は通常の融資が適しています。
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新株予約権っていつ使われるの?
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金融機関は新株予約権をそのまま売却するか、IPO時に権利を行使して株式を購入後に売却することで、利息収入に加えてキャピタルゲインを得ます。多くの場合、IPOのタイミングで行使されます。
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審査にはどれくらい時間がかかる?
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金融機関によって違いますが、通常の融資よりも審査項目が多いため、やや時間がかかる傾向があります。
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返済方法は選べる?
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元金一括返済と元利均等返済の両方に対応している金融機関が多く、企業のキャッシュフローに合わせて選択できます。
最後に
新株予約権付融資は、適切に活用すればスタートアップの成長を大きく支援する可能性を持つ資金調達手法です。金利優遇や株式希薄化の先送りといったメリットは確かに魅力的ですが、会計処理の複雑さや将来の希薄化リスクといった課題も存在します。
この制度の活用を検討される際は、自社の成長ステージ、資金用途、リスク許容度を総合的に判断し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。長期的な事業計画やIPO戦略との整合性を十分に検討した上で、適切に活用すれば、スタートアップの成長戦略における有効な手段となるでしょう。
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