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【2025年8月】日本企業のIFRS適用が300社を突破、東証時価総額の約50%に

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Last Updated on 2025年8月31日 by ロジメイト編集部

IFRS国際会計基準の採用が加速、グローバル投資家への対応強化が背景に

2025年8月8日更新|東京証券取引所データ分析

東京証券取引所が2025年8月8日に「会計基準の選択に関する基本的な考え方」を公表しました。

本資料は、東証が定点的に公表をしている資料で、東証上場企業におけるIFRSの適用状況を確認できる資料です。(前年は、2024年7月22日に公表しています。)

2025年6月末時点の東証上場企業3,803社のうち、IFRSを適用済み・適用決定済み・適用予定の企業数が初めて300社の大台に乗ったようです。

社数ベースでは、意外と少ないなという感想でしたが、注目すべきは、これら300社が占める時価総額の割合です。

2025年6月時点における東証全体の時価総額1,012兆円のうち、IFRS採用企業が504兆円(49.8%)と、ついに半数近くに達したとのことです。時価総額の大きな企業の多くがIFRSを適用していることは印象どおりではあるのですが、企業数では全体の7.9%にとどまるものの、時価総額ベースでは日本の上場企業の「顔」となる大手企業の多くがIFRSを適用しているということが分かります。

主要業種の採用状況から見る傾向。グローバル対応が必要な業種のIFRS採用はやはり多いようです。

IFRS採用企業の現状(2025年6月末時点)

日本企業のIFRS適用状況
カテゴリー 企業数 時価総額 主な特徴
IFRS適用済企業 すでにIFRSで財務諸表を作成・公表 287社
(全体の7.5%)
480兆円
(全体の47.4%)
トヨタ、ソニー、武田薬品など日本を代表する企業が中心
IFRS適用決定企業 正式に適用を決定し公表済み 8社
(0.2%)
7兆円
(0.7%)
2026年3月期までに移行予定が中心
IFRS適用予定企業 適用に向けて準備を表明 5社
(0.1%)
17兆円
(1.7%)
中期経営計画で言及する企業が増加
IFRS検討中企業 適用の可能性を検討中 90社
(2.4%)
89兆円
(8.8%)
適用時期や影響度を分析中
その他 (日本基準継続等) 3,413社
(89.7%)
419兆円
(41.4%)
中小型株が中心、国内事業特化型企業

業種別で見るIFRS採用率トップ3

圧倒的IFRS採用率を誇る業種としては以下のとおりであり、国際展開している企業は当然多いようです。

  • 医薬品業界 – 時価総額の比率ベース92.6%(社数は19社/80社中)
  • 代表企業:中外製薬、武田薬品工業、第一三共、大塚HD、アステラス製薬
  • 輸送用機器業界 – 時価総額の比率ベース90.4%(社数は18社/87社中)
  • 代表企業:トヨタ自動車、本田技研工業、デンソー、スズキ、SUBARU
  • ゴム製品業界 – 時価総額の比率ベース84.5%(社数は5社/18社中)
  • 代表企業:ブリヂストン、横浜ゴム、住友ゴム工業

一方で、銀行業、海運業、パルプ・紙、倉庫・運輸関連の4業種では、現時点でIFRS採用企業がゼロという対照的な結果となっています。銀行業に関しては、US-GAAPを利用していることが多いものと認識していますので、対照的にJGAAPを利用しているわけではないですね。

プライム市場の大型株ほど進むIFRS適用、時価総額3兆円超企業の6割が採用しています

市場区分別IFRS採用状況(2025年6月末)

東証市場区分別IFRS採用状況
市場区分 全上場企業数 IFRS採用企業数 時価総額カバー率 前年比
プライム市場 グローバル企業向け市場 1,623社 240社
(14.8%)
51.7%
(502兆円/972兆円)
+1.2pt
スタンダード市場 国内機関投資家向け市場 1,570社 24社
(1.5%)
4.5%
(1.4兆円/31兆円)
-0.2pt
グロース市場 成長企業向け市場 610社 36社
(5.9%)
7.8%
(0.7兆円/9兆円)
+0.1pt

プライム市場における時価総額別IFRS採用状況

時価総額別IFRS採用状況
時価総額レンジ 該当企業数 IFRS採用企業数 採用率 代表的な採用企業
3兆円以上 75社 44社 59% トヨタ、ソニー、NTT、ソフトバンクG
1兆円〜3兆円 104社 43社 41% 武田薬品、デンソー、KDDI
5,000億円〜1兆円 115社 37社 32% スズキ、カカクコム、協和キリン
1,000億円〜5,000億円 512社 65社 13% 中堅製造業、IT企業が中心
1,000億円未満 817社 40社 5% 新興企業、ニッチトップ企業

JPX日経400構成銘柄の6割近くがIFRS採用、投資指標としての重要性高まる

日本を代表する優良企業で構成されるJPX日経インデックス400(396社)においては、135社(34.1%)がIFRSを採用。時価総額ベースでは454兆円と、指数全体(784兆円)の57.9%を占めています。

これは前年公表資料の60%から若干低下したものの、依然として高水準を維持しています。グローバル投資家が重視する指数構成銘柄の過半数がIFRSを採用している事実は、日本市場の国際化を象徴しています。

2026年3月期までに新たに9社が適用予定、検討企業は90社あるものの実務面の課題も公表されています

今後のIFRS適用スケジュール

IFRS適用開始時期別企業数
適用開始時期 適用決定済み 適用予定 合計 注目ポイント
2025年度中 (2025.4〜2026.3) 6社 3社 9社 年度決算からの切り替えが主流
2026年度中 (2026.4〜2027.3) 2社 1社 3社 中期経営計画との連動
2027年度以降 0社 1社 1社 長期的な準備を実施

IFRS適用を検討中の90社が重視する検討項目

なお、検討企業90社のうち61社が具体的な検討事項を開示しており、適用時期が1位のは当然ですが、情報収集やマニュアルなどについての課題があることが分かります。

IFRS適用検討企業の主要検討事項
順位 検討事項 企業数 具体的な内容
1位 適用時期の決定 28社 中期経営計画との整合性、システム更新時期
2位 情報収集 18社 他社事例、業界動向、規制動向の把握
3位 マニュアル・指針整備 15社 グループ会計方針の統一、実務ガイドライン
4位 影響度調査・分析 12社 財務数値への影響、KPIの変化
5位 社内体制の整備 7社 人材育成、組織体制、監査対応

業種別IFRS採用企業リスト(時価総額上位)

以下のとおり、業種別のIFRS採用企業リストも公表されていましたので、抜粋しておきます。

日本企業の顔と言える企業がIFRS採用していますね。

情報・通信業(44社/604社中採用)

ソフトバンクグループ、ソフトバンク、KDDI、日本電信電話、NTTデータグループ、LINEヤフー、野村総合研究所、コナミグループ、ネクソン、光通信、SCSK、メルカリ

サービス業(48社/548社中採用)

リクルートホールディングス、楽天グループ、エムスリー、ベイカレント、電通グループ、パーソルホールディングス、カカクコム、テクノプロ・ホールディングス

電気機器(31社/232社中採用)

ソニーグループ、日立製作所、アドバンテスト、富士通、三菱電機、日本電気、村田製作所、パナソニックホールディングス、ルネサスエレクトロニクス、ニデック、TDK、京セラ

卸売業(15社/293社中採用)

伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、丸紅、住友商事、豊田通商、双日、兼松

※商社といえばIFRSのイメージですよね。

まとめ:日本企業のIFRS採用は今後も加速見込みか

2025年6月末時点で300社、時価総額の約50%という節目を迎えた日本企業のIFRS採用。

社数ベースではまだまだという印象でしたが、時価総額ベースでは海外機関投資家などを意識すると、IFRS採用はマストになってくるのかもしれませんね。

企業価値向上とグローバル競争力強化を目指す日本企業にとって、IFRSは避けて通れない選択肢となりつつあります。


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本記事は2025年8月末時点の情報に基づいて作成されています。最新の動向については、上記の各機関の公式発表をご確認ください。

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この記事の執筆者

西川隆将

西川 隆将

公認会計士
2015年に北海道大学在学中に公認会計士試験に合格。大学卒業後、EY新日本有限責任監査法人での監査業務を経て、株式会社BearTail(現TOKIUM)にて事業会社での実務経験を積む。その後、PwC税理士法人で税務業務に従事し、公認会計士として登録。2025年7月に「ロジメイト」を立ち上げ、監査・事業の各領域での豊富な経験を活かしたサービスを提供している。北海道帯広市出身。

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