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新株発行等の公募増資時におけるスプレッド方式による増資の会計処理|実務担当者が知るべき具体的な仕訳例

目次

Last Updated on 2025年8月25日 by ロジメイト編集部

 

スプレッド方式とは?株式発行における引受手数料の仕組み

スプレッド方式の定義と特徴

スプレッド方式は、企業が公募増資などにおいて、新株発行を行う際の引受手数料の支払方法の一つです。

そもそも、(株式)スプレッド」とは、株式公募増資において、ブックビルディング方式等によって決定された公開価格(すなわち募集価格)と、証券会社の引受価額との差額のことを指します。

公募増資においては、投資家から株式の販売代金として受け取った現預金等のうち一部を、引き受けた証券会社が取扱手数料(または引受手数料)として徴収し、残りの金額を引受価額として会社に払い込む方式が通常取られており、これをすなわちスプレッド方式と呼びます。

この方式では、以下のような流れで取引が行われます:

1.発行価格・売出価格で、投資家への新規株式の募集・売出しの勧誘を行う
例:110円での募集・売出しの勧誘を行います。
2.引受証券会社に引受価額で株式を発行・売却し、引受証券会社は投資に発行価格・売出価格で株式を受け渡す
例:100円で引受けし、110円で投資家に対して株式を割り当てます。10円は以下のとおり、スプレッドとして差額となります。
3.引受証券会社と投資家の取引
110円と100円の差額が引受手数料=スプレッドとして処理する金額となります。
(8%等が設定されることが多いです。)

上記の例では、引受価格100円、募集価格110円の場合、10円の差額が、証券会社の手数料収入=スプレッドとなります。

本記事では、当該公募増資時のスプレッド方式の会計処理について確認をしていきましょう。

公募増資時における2つの会計処理方法(スプレッド方式・外枠方式)

公募増資時には、引受証券会社を通じて2つの株価(発行価格・引受価額の2つ)でのやり取りが行われることが分かりますが、以下のとおり、それぞれの価格に応じた会計処理(スプレッド方式による会計処理、外枠方式による会計処理)が存在しています。

結論は、「スプレッド方式」での会計処理が行われることが通常です。

方法①:スプレッド方式(=引受価格)による会計処理(実務上の主流)

  • 引受証券会社による引受価格に基づき新株発行の会計処理を実施
  • 引受手数料については別途会計処理しない
  • シンプルで実務的な処理方法(ほぼすべての会社がこちらを採用しています。)

スプレッド方式による会計処理のメリット

  • 処理が簡潔で事務負担が少ない
  • 実務慣行として広く採用されている

上記の事例だと、手取りとなる株価100円で純資産の増加を認識する方法であり、ほとんどすべての会社がこのスプレッド方式による会計処理を採用しています。

念のため、以下のとおり、外枠方式も示します。

方法②:外枠方式(=発行価格・売出価格)による会計処理(限定的な会計処理)

  • 実際の発行価格・売出価格に基づき会計処理を行う
  • 引受手数料は株式交付費として別途計上
  • 2取引基準により、実際の公募価格と引受価額それぞれに基づいたBS,PLが表示される。

上記の事例だと、110円で純資産の増加を認識する方法であり、手取りである100円との差額である10円をPLで費用認識する方法となります。

ただし、外枠方式による会計処理は冒頭に述べた通り、ほとんど利用されていません。

具体的な仕訳例:設例で学ぶスプレッド方式の会計処理

A社のスプレッド方式による新株発行

前提条件

A社は、X1年6月に引受証券会社と株式引受契約を締結し、引受証券会社を通じて新株式の発行を行い、同年7月1日に登記によるみなし発行を受けた。

株式発行の諸条件:

  • 増加する資本金:50,000円
  • 発行株式数:1,000株
  • 引受価格:100円/株
  • 募集価格:110円/株
  • 払込期日:X1年7月1日

スプレッド方式による会計処理

【会計処理】

<払込期日(X1年7月1日)>

(借)現金預金  100,000*¹  |(貸)資本金      50,000*²
                           |      資本準備金  50,000*³

注記:

  • *¹ 100円/株 × 1,000株 = 100,000円
  • *² 増加する資本金として登記する額
  • *³ 払込みに係る額の2分の1を超えない額は資本金として計上せず、資本準備金として計上することができます

仕訳のポイント解説

よくある質問(FAQ)

スプレッド方式と外枠方式の違いは?

スプレッド方式では手数料を別途支払わず、募集価格と引受価格の差額が手数料となります。

外枠方式では、募集価格で引受けた後、別途手数料を株式発行費用として会計処理します。

どのような企業がスプレッド方式を採用すべきか?

ほとんどすべてのスプレッド方式による会計処理が採用されています。

IPO(新規株式公開)や公募増資を行う上場企業、大規模な資金調達を行う企業に適しています。なお、スプレッドは、引受証券会社との交渉により決定されます。

スプレッドはどのくらいが一般的ですか?

通常のIPOなどでは8%程度、POでは数%程度となります。なお、ディールサイズと呼ばれる公募・売出金額の総額が大きくなった場合はスプレッドの料率が低下する傾向にあります。

企業の成長戦略において、適切な資金調達は極めて重要です。

スプレッド方式は、通常の会計処理として、ほとんどの企業で採用されています。

本記事を参考に、正しい会計処理を選択し、円滑な資金調達を実現してください。

なお、実際の会計処理にあたっては、必ず監査法人や税理士等の専門家にご相談の上、最新の法令・会計基準に準拠した処理を行うようにしてください。


最終更新日:2025年
カテゴリー:会計・財務、企業会計、資金調達
タグ:#スプレッド方式 #増資 #会計処理 #株式発行 #引受手数料 #資本金 #企業会計基準


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この記事の執筆者

西川隆将

西川 隆将

公認会計士
2015年に北海道大学在学中に公認会計士試験に合格。大学卒業後、EY新日本有限責任監査法人での監査業務を経て、株式会社BearTail(現TOKIUM)にて事業会社での実務経験を積む。その後、PwC税理士法人で税務業務に従事し、公認会計士として登録。2025年7月に「ロジメイト」を立ち上げ、監査・事業の各領域での豊富な経験を活かしたサービスを提供している。北海道帯広市出身。

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